スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「はい。わたし、ずっとクラシック系のピアノを習ってて、そこそこ弾けるし、音楽の専門の教員免許も持ってるんですけど、今日聴いたジャズは、これまで聴いてきたどの音楽とも違う何かがあって、びっくりしました。ジャズのイメージが変わりました」
イケメンは髪を掻き上げて、ふふんと得意げに笑った。
「どんなイメージ持ってたんだよ?」
「オシャレで、難しくて、静かで、つかみどころがなくて、取っ付きにくいと思ってました」
「全然違ったろ? 踊り出さずにいられない、声が思わず出ちまう。そのくらい、派手で正直でにぎやかでテクニカルで、つかみどころがないどころか、オーディエンスをつかんで離さねえ。それがビッグバンドのジャズの味だ」
ビッグバンドジャズを耳にしたことは、これまでにもあったと思う。
でも、それをジャズと呼ぶのだとは知らなかったし、CDやラジオで聴くのと生演奏ではまったく別物だった。
アドリブソロに象徴されるように、ジャズという音楽は、それ自体が生もので、生き物だ。
土臭くもあって、オシャレでもあった。
複雑なことをやってるのに、すんなり体に入ってきた。
コードやリズムはなじみ深くて、でも、メロディにはつねに意外性が潜んでいる。
力強くて軽やかで、派手なのにどこかシンプルで、ロジカルなのに柔らかかった。