スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
不意に浮かんだイメージは、タキシードとドレスの美男美女が、裸足の浜辺でくるくる踊ってるシーン。
波に足を浸して裾を濡らして、潮風に髪を乱しながら笑って、優雅で軽快なダンスを披露する。
そういうアンバランスでギャップのあるオシャレ感。
「さて、先生」
「は、はい?」
イケメンがテーブルに手を突いて、背中をかがめて、わたしに顔を近付けた。
笑顔、と呼ぶには何だか冷たい。
凄味がある、というか。
「帰れ」
「へっ!?」
「入れ替え制だ。後半のライヴは前売券だけで満席になってる。居座られちゃ困るんだよ」
「え、いや、あの、わたしはらみちゃんのことをお尋ねしたくて……」
「時間がねえ。今は帰れ。おれの仕事の邪魔だ」
「はぁ? 仕事?」
「あいつらのおもり」
「おもりって、あの、バンドのお世話って意味ですか?」
「それ以外の何だってんだよ? あいつら、むちゃくちゃ面倒くせぇんだから、とにかくあんたはさっさと帰れ」
「いやでもわたしだって仕事……」
形のいい手が伸びてきた。
と思うと、あごをつかまれた。
やたら美形な顔が、ますますわたしに近付く。
「帰れ」
美声が放つ、冷たい一言。
かすかに、コロンの匂い。
迫力、すごすぎる。