スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「……わ、かり、ました……」
敗北宣言をつぶやいたら、イケメンはにっこりして、あごをつかむ指を離した。
その手が、わたしの頭をぽんぽんと叩く。
「じゃあ、気を付けて帰れよ、先生」
うなずくことしかできなかった自分が情けない……くぅぅ。
追い立てられるまま、わたしは地上に出た。
ライヴハウスに入るときはうっすらと明るかったけど、今はもう完全に暗い。
時計を見たら、午後8時半を回っている。
そんなに時間が経過してたとは、ちょっと信じられない。
えーっと。
わたし、何しにここに来たんだっけ?
らみちゃんの家庭訪問じゃなかった?
それがどうしてこういうことになってるの?
意味がわからないんですけど。
とりあえず。
「おなかすいた!」
わたしは表通りに出て、タクシーをつかまえることにした。