スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
第2章 居食屋・飛梅と先生的小学校ライフ
「明日も突撃しなきゃ!」
「あっ、なぎちゃん、いらっしゃい。今日は遅かったね」
飛梅【とびうめ】の暖簾をくぐると、カウンターに立つ俊【とし】くんがいつもどおりの笑顔で迎えてくれた。
カウンター席に居並ぶ常連さんたちも、わたしに挨拶や会釈を向ける。
わたしは店内をずかずかと進んでいって、美香子先生が通勤バッグを持ち上げて空けてくれた席に、ドサリと腰を下ろした。
カウンター越しの俊くんに、盛大なため息交じりで注文を飛ばす。
「レッドアイのビール抜きと、本日のまかない丼」
「はい、トマトジュース1、まかない丼1! 親父、これ、なぎちゃんのだから」
俊くんは、カウンターの奥にある厨房に向かって声をあげた。
「うーぃ」と、おじさんの返事が聞こえる。
小柄でかわいい眼鏡っ娘、養護教諭の日比谷美香子【ひびや・みかこ】先生が、にこにこしながら小首をかしげた。
いつも襟足でくくってる、長い髪のふわふわは天然パーマなんだそうだ。
わたしより2つ年上の31歳だけど、だいぶ若く見えて優しいから、子どもたちに大人気。
「なぎさ先生、今日はどうしたの? けっこう早く学校を出ていたでしょう?」
「家庭訪問の続きというか、補填というか、プラスアルファというか、番外編というか」
「あら、家庭訪問? その割に、ずいぶん遅くまでかかったのね」
「異次元に行ってきました」