スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


ねえ、と美香子先生もうなずいた。

ほわっとした微笑みは引っ込めずに、でも、眉尻はキュッと下がっている。


「らみちゃんみたいな子の相手は、大変なときもあるのよね。教師側が普通だと思っているルールだとかペースだとかが、どうもずれてしまってる場合がある。

それは教師側の責任とも言えなくて、もちろん子どもが悪いわけでもなくて、難しいわよね」


美香子先生が思い浮かべてる言葉を、わたしは正確に読み取ったと思う。

わたしも同じ言葉を思い浮かべているから。


「発達障害、よね」


俊くんにさえ聞こえないかもしれない小声で、わたしは美香子先生に言った。

美香子先生はうなずかず、ただ、否定もしない。


「養護教諭のわたしのところに、診断書は提出されていないわよ。いずれにしても、らみちゃんとは、1対1できちんと向き合ってあげることが大事だと思うの。校長先生、教頭先生も、そのあたりを感じているみたいよ」


「らみちゃんに社会性がないとは言わない。社交性は十分にある。でも、こだわりが強すぎる面があるのと、言動の文脈が独特すぎて、わたしはまだパターンが把握できない」


「知能、学習能力、社会性、どれを取っても、普通学級でやっていける水準なんでしょう?

去年のらみちゃんの担任の先生は、ご自身の体調不良や家庭事情も重なって、あまり子どもたちと向き合えず、記録も十分に残しておられないのよね」


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