スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「そうなんだよね。それが不安要素のひとつなんだ。1、2年のころの先生は退職なさったらしくて記録もないし、情報不足で困る。らみちゃんばっかり構うわけにもいかないしさぁ……」
わたしと美香子先生が教員同士の内緒話を始めると、俊くんはさり気なく離れていって、別のお客さんの談笑に加わった。
そういう気遣いがありがたいんだ。
教員は、子どもたちとまっすぐに向き合って、その心の深くまでを知る仕事だ。
成長途上の生身の人間と間近に接して、ときに導いて、あるいは逆に教えられて、日々を過ごしていく。
やり甲斐のある仕事であると同時に、凄まじくストレスの大きな仕事でもある。
担任を持つわたしと養護教諭の美香子先生は、この飛梅で、こうして重荷を分け合える。
抱えた悩みを言葉にして、ストレスを発散したり、問題解決の糸口を見付けたりできる。
この関係がなかったら、らみちゃん問題は、けっこう苦しいかもしれない。
「美香子先生、合奏、どうしたらいいと思う?」
「やっぱりうまくいかないの?」
「うん……」
目下、名前の呼び方云々よりも難しくて、家庭訪問の次に大きな問題が、音楽の授業の合奏だ。