スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「らみちゃんってね、音楽、めちゃくちゃよくできるんだよ。ピアノで耳コピするのも、歌うのも、すごく上手。
だから、合奏ではメロディのリードをやってもらおうと思ってたんだけど、太鼓がいいって言い出したんだよね」
小学校の音楽の合奏で、打楽器は不人気だ。
鍵盤ハーモニカやリコーダーの苦手な子が、出番の少ない打楽器ならどうにかなるって、消去法的に選ぶ。
らみちゃんは、大太鼓と小太鼓とシンバルを全部1人でやりたいと手を挙げて、実際にやってのけた。
らみちゃんが主張し出したら止まらないのはクラスのみんなが知ってるから、打楽器志望の音楽苦手っ子たちはしぶしぶリコーダーに回ってくれた。
「なぎさ先生としては、最初はそれでいいと思ったわけでしょう?
小学生の合奏でいちばんのネックになるリズムキープを、音楽の得意ならみちゃんが担当してくれる。音楽に消極的な子どもたちに、リコーダーを頑張ってもらえる」
「そうだったんだけどね。らみちゃんが楽譜どおりやってくれないの」
「相変わらず?」
「うん。何回注意しても、変な癖のある叩き方しかしない。楽譜が理解できないわけじゃないのに、四分音符や八分音符を正確に叩いてくれない。
メトロノームをお手本にって言ったら、それじゃつまんないからって、とにかく違うことばっかりやりたがる」