スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「もうアレンジを許しちゃったら?」
「毎回同じアレンジをしてくれるなら、楽譜に起こして、クラス全員で共有できるんだけどね」
「毎回違うアレンジなの?」
「器用すぎるよね、こんなことやるって」
「らみちゃんって芸術肌なのね」
たん、たん、たん、たん。
と叩くように楽譜は告げている。
単純で簡単な四分音符だ。
でも、らみちゃんは、そこに変なアクセントや訛りを突っ込んで叩く。
たターん、たターん、たターん、たターん。
保つべきテンポは崩されない。
だから、わたしみたいに少々音楽に通じてる大人なら、らみちゃんの呼吸をつかんで、一緒に演奏することができる。
でも、小学4年生には無理だ。
楽譜が読める、音楽がちょっと得意な子ほど、らみちゃんの訛りに引きずられて演奏が乱れる。
その子たちを頼ってる、同じパートの音楽苦手っ子たちは、ますますもって演奏できなくなる。
「ああもう、どうしよう? どうにかして解決策を編み出さないと、最近、音楽の時間の雰囲気が悪くなってきてるんだよね。
らみちゃんほどじゃないけどピアノ弾けるような子たちが、らみちゃんのこと嫌いになり始めてて、空気が痛い」