スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「ねえ、美香子先生ってさ、最初に会ったとき、だいぶ太ってたよね? どんどんやせてかわいくなってきてるけど、ダイエットとかしてる?」
「食べることに執着しなくなっただけ。食に関して、普通の感覚になっただけよ」
「執着って?」
「わたしね、前の学校では、ストレスのせいで、いつも何か食べてないと気が済まなかったの。
2年半の間にすごく太っちゃって、肌もボロボロだったし、最後には自律神経がおかしくなって、倒れて休職することになったの。半年間、お休みをもらった」
今の喜多小学校に着任する前はしばらく休職してたって、そういえば、チラッと聞いたことがある。
前の赴任校が、この地区でも有名な、問題の多い中学校だったって話も知ってる。
「そんなに大変だったんだ?」
「よく覚えていないわ。つらい記憶って、靄がかかったようになったりするでしょう?
毎日がそういう状態だったから、学校帰りにスーパーに寄るのが日課で、ものすごい勢いで食べ物を買っていた記憶くらいしかないの」
「そっか……」
「休職の手続きをしたとき、管理職の先生方から、根性なしって言われたのよ。職員室で、ご迷惑をお掛けしますって頭を下げたら、返事してくれる先生がいなかった。
だからこの学校は問題が改善しないんだなって思ったわ。職員室があんなふうじゃ、ね」