スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
第3章 その正体は身勝手ホゴシャ!?
「とにかく乗れ。御託は後で聞いてやる」
「なぎさ先生、おはようございまーす! 放課後、ライリが待ち合わせって言ってた!」
朝いちばんの職員室付近で、らみちゃんがわたしを待ち構えていた。
微妙に言葉足らずなメッセージが廊下に響き渡る。
ちょうど出勤してきた6年生の先生が、どんぐりまなこをますます丸く見張った。
わたしは彼に会釈して、らみちゃんに問い返す。
「らみちゃん、おはよう。ねえ、ライリって、昨日らみちゃんと一緒にいた男の人よね?」
「うん!」
「ライリさんって、らみちゃんとどういう関係なの?」
「ライリはライリだよ! ライリはいつもドラム叩くの。でも、昨日と今日は、ドラム叩くのはジョンなの。あたしは特別に早く席に着くけど、ライリは先生を迎えに来て、一緒にライヴ聴くって言ってた」
「迎えに来る?」
昨日の夜に届いた謎のメールが頭をよぎって、ゾワッとした。
「迎えに行くよ」っていう一言はやっぱり不気味だった。
いや、でも、ライリさんのはずはない。
わたしのメールアドレス、知ってるわけがないんだから。
わたしは電話番号以外の個人情報を保護者さんに教えていない。
職員室内のやり取りでメールを使うことはあるけど、それは県の教育委員会が提供しているサーバのアドレスだ。
個人用のアドレスは、美香子先生を含め、誰も知らないはず。