スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
プールの授業が始まる前でよかった。
プールの日には朝から家で体温を測ってきてもらうし、体調が危うい子は直前にも測らせる。
直前検温のリストの筆頭に、らみちゃんを載せておかないといけない。
頼利さんがコーヒーを口に含んだ。
今度は飲める温度だったらしい。
ほどよく厚みのある唇が左右非対称に軽く歪んで、短いため息を吐き出した。
「あんたが、らみのことをきちんと心配してんのは、よくわかった。家庭訪問だ何だとうるせぇのも、ノルマだからしつこいってわけじゃなかったんだな?」
「ノルマって言葉、子ども相手の教員の仕事においては絶対、使っちゃいけないでしょう!
機械的に仕事を処理するような考え方する先生に、子どもたちがついて来てくれるはずないんだから!」
「だぁぁ、いちいち声がデケェんだよ、あんたは」
「すみませんねー。職業病ですー」
「その言い方、小学生か」
「あなただって十っ分に子どもっぽいでしょう!? 今のこの状況、まともな社会人だったら、普通は丁寧語でしゃべってる場面ですよね?」
「あいにくだが、おれはまともな社会人とやらじゃねぇよ。不良崩れのミュージシャンに何を過剰な期待してんだ?」