スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
いかん。
これ、止まりそうにない。
だって、負けたくないんだもん。
と、わたしが闘志と危機感を同時にいだいた瞬間だった。
よくある着信音が鳴って、頼利さんがポケットからスマホをつまみ上げた。
画面を見て、眉を段違いにして、電話に出る。
「Hello?」
電話の相手はウォーターサイド・ジャズ・オーケストラのメンバーなんじゃないかと、何となく思う。
頼利さんは英語で受け答えしている。
不良崩れが英語しゃべるんですか。
何だこれ、住む世界が違う。
ほどなく電話を切った頼利さんは、コーヒーを一気飲みすると、テーブルの上の伝票を手にして立ち上がった。
「悪ぃ、急用ができた」
「はい?」
「話の続きはライヴの後にしてくれ。WJOの連中を数人、迎えに行かなきゃならねえ。観光に出て、迷子になりやがったらしい」
WJOって、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラの略称だろう。
日本語だったらウォータジャとかって略しそうだけど、英語だと頭文字のアルファベットに略すんだな。
しかし、それにしても。
「迷子ですか?」