スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「子どもみてぇな連中なんだよ。
ツアーの移動で使う新幹線じゃ席割りを決めといてやらねぇと、誰がどこに座るとかってケンカを始めるし、仲のよすぎるやつ同士でくっつけたらビール飲みまくって演奏にならねぇし」
「こ、子どもですね……」
いい年してるのに。
楽器持ってたら、あんなにカッコいいのに。
え、そのお子さまの中に、あのドラムの貴公子も含まれますか?
ショックなんですけど。
「何にしても、先生、開演までにライヴハウス・デュークに入ってろ。らみも早めに席に着くだろうしな。しばらく時間が空くが、ここで仕事でもしててくれ」
「あ、はい、それはわかりましたけど、コーヒー代は……」
「男が払うもんだろ。黙っておごられてろ」
「……すみません、ごちそうさまです」
「すまんじゃなくて、ありがとうって言え。そういう言葉遣いしてっから、らみがいちいち混乱すんだ。
すまんとありがとうの違いについて、ここんとこ何度も尋ねてくんのは、たぶんあんたのせいだな」
「う」
カチンと来る言い方だけど、言い分は正しい。
わたしは反論できないまま、レジへと歩いていく頼利さんの後ろ姿を見送った。