スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


そうなのよね。

知らなかったの。

ごめんね。

おうちの人って言うたびに、もしかしたら、らみちゃんに寂しい思いをさせてしまっていたかもしれない。

負担やストレスをかけて、熱を出す原因を作っていたんじゃないかな?


謝りたい気持ちがグワッと湧いてきたんだけど、らみちゃんの表情には曇りがないから、わたしは言葉を胸の奥に押し込んだ。

大人の判断で繰り出す言葉は、ときどき、らみちゃんを混乱させる。

今は、ごめんって言うべき場面じゃない。


らみちゃんは「ああっ!」と大きな声をあげて、ポンと手を打った。


「あたし、帰ったら、ライリにいっぱいプリント渡さなきゃ! ライリ、サボらずにプリント読んでくれるかな?」


「どれだけ時間がかかりそうでも、全部キッチリ読ませたらいいと思うよ」


「そっか! そうする!」


よし、懸案事項が1個、片付いた。

これで、らみちゃんちが音信不通になることは、今後はないはず。


と言っても、そもそも懸案事項だらけだから、ここは腹をくくって根気よくやっつけていくしかないわけだけど。


「ねえ、らみちゃん、頼利さんのこと訊いてもいい?」


「いいよ!」


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