スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
加納が冷たい笑顔をらみちゃんに向けた。
「大人の話に首を突っ込まないでもらえるかな、お嬢さん。邪魔をするのは行儀が悪いぞ」
加納の手が、らみちゃんを押しのけようとする。
とっさにわたしはらみちゃんを抱きかかえて、加納から後ずさった。
ああ、動けた。
らみちゃんの体温と柔らかさが、急速に現実感を連れてくる。
わたしの前に、スラリとして広い背中が立ちはだかった。
「邪魔はテメェだ。誰だか知らねぇが、お呼びじゃねえってんだ」
頼利さんが、わたしの通勤バッグを拾い上げた。
対峙する長身の2人を、不意に車のヘッドライトが照らし出す。
色の薄い目のせいでまぶしい光の苦手な加納が、顔の前に腕を掲げた。
駐車場から滑り出てきた車が、キュッとタイヤを鳴らして停まる。
「Riley, Rummy! Come on!」
運転席を飛び降りて頼利さんとらみちゃんを呼んだのは、ドラムの貴公子ジョンだった。
頼利さんが貴公子に向かって何か叫んで、わたしを振り返る。
「乗れ!」
頼利さんに腕を引かれて、らみちゃんの肩を抱いて、短い距離を走る。
貴公子がドアを開けてくれた後部座席に転がり込む。
ドアが閉まる寸前、貴公子の頼もしげな笑顔が見えた。
運転席に頼利さんが飛び乗って、車を発進する。