スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「ジョンに車のキー貸しててラッキーだった」
頼利さんがつぶやいて、バックミラー越しにわたしを見た。
らみちゃんがわたしにギュッと抱き付いてきた。
「なぎさせんせぇ……!」
声が涙に濡れている。
わたしは、らみちゃんの体に腕を回した。
「ごめんね。びっくりしたよね。知らない人に勇気を出して話しかけなきゃいけなくて、怖かったよね」
「ちあう……せんせ、こわあったえしょ? あぅぅ……っ」
違う、って。
先生こそ怖かったでしょう、って。
らみちゃんが泣いているのは、わたしのためなんだ。
「大丈夫だよ。ありがとう、らみちゃん」
言葉が出なくなるくらい怖かったのは、らみちゃんも一緒なのに、わたしを守ってくれたのは、らみちゃんだった。
優しい子。
強い子。
バックミラーの中の頼利さんが、ぶっきらぼうに言った。
「あんたのバッグ、助手席にある。中身が全部あるかどうか確認しろ。それと、飯、一緒に食うか?」
そういえば、食べてなかったんだ。
解散してから飛梅に行こうと思っていた。
いや、このまま飛梅まで連れていってもらおうか。
「家の近くまで送ってもらってもいいですか?」
ああ、と頼利さんはうなずいた。
車は静かに、夜の国道の流れに乗った。