スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
☆.。.:*・゜
反射的に「いらっしゃませ」と言った後、俊くんの顔からいつもの微笑みが抜け落ちた。
怪訝そうな、というか、深刻そうな表情になって、カウンターの向こう側から飛んでくる。
「なぎちゃん、どうした? 具合でも悪い? 顔、真っ青だよ。それに……あ、いらっしゃいませ」
俊くんは、わたしの後ろについて飛梅の戸をくぐった頼利さんに、慌てて挨拶をした。
らみちゃんを背負った頼利さんが、カラカラと音をたてて戸を閉める。
「遅くなっちゃったんだけど、俊くん、今からごはん作ってもらえる? わたしと頼利さんの2人ぶん」
オーダーストップぎりぎりの時間帯だった。
平日ど真ん中とあってか、店内にはただひとり、美香子先生がいるだけだ。
美香子先生はふわふわの髪を揺らして、どうしたの、と小首をかしげた。
俊くんはわたしの言葉にうなずいて、頼利さんの背中のらみちゃんをのぞき込んだ。
「食事は、なぎちゃんが来るかもしれないと思って軽く準備してあるし、問題ないよ。
こちらのお子さん、寝ておられますね。座敷のほうを使いください。あ、座布団、並べますね」
俊くんは、ちょうど仕事を上がろうとしていたバイトさんに、奥からタオルケットを取ってくるように言って、自分は座敷に即席のベッドを作り始めた。
美香子先生がすばしっこく立ち上がって、俊くんを手伝う。