俺の半径3メートル以内に近寄るな。 【完】
そして涼太くんはそっと私を離すと、手を握った。




「誰よりもそばにいたいんだ」




「涼太くん…ありがとう。涼太くんは本当誰にでも優しいよね」




この優しさにどれだけ救われただろう。




「…誰にでもじゃないよ。花だけだよ。俺は花が思ってるほどいい人じゃないし、花に優しくするのは好きだからだよ」




涼太くんは顔をほんのりと赤くさせていた。




そして真っすぐな瞳は、私にだけ向けられていた。




「だから、柊じゃなくて…俺を選んで?」




涼太くんの真剣な眼差し、その優しい言葉に思わず首を縦に振りそうになってしまった。




しかし私はそっと涼太くんから手を離し言った。




「…ごめんなさい」




ベンチから立ち上がり、頭を深く下げたのだった。
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