弱虫総長と七人の護衛
自嘲気味に笑いながらもう一度欠伸をする。

本当……マジで疲れたんだけど、この人本気で三万ですむと思ってんのか?

いや、思ってねぇな。

戦力外の馬鹿総長、綺羅紬を見つめ俺は軽く項垂れた。

鼻歌なんか歌っちゃってる辺り、俺がそう思ってることにすら気づいちゃいねぇんだろうな。調子の良いやつめ。


苛ついて来たので、歩幅を速める。足の遅い紬はついてくるのに精一杯だ。

「ちょっと待ってよぉ、速い、萩速すぎ!」

「知りません。あんたが体力無いだけでしょ。総長、一回死んどきません?」

「やだよぉぉ、死ぬの痛いし怖いもん!」

「俺なら一瞬で首切れますよ?即死ですから、痛くないかと」

「ごめん、言い方が悪かった。おれまだ死にたくないよ!」

「それじゃあもっと強くなってください」

慌てふためいて必死に弁解しようとする紬にでこぴんをかまし、俺は更に歩幅を速めた。

後ろから静かになった紬が小走りについてきているのが分かる。

俺は敢えて振り返ることはせず、馴染みの裏路地をすいすいと曲がっていった。
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