弱虫総長と七人の護衛
梓は「ふぅん?」と探るように俺を見つめていたが、やがて足音と共に気配が消えた。

俺の反応が薄いからつまらなくなったのだろう。俺が顔をあげたのと、廊下の奥の扉がパタンと閉まったのが同時だった。

うまく撒いたかな?

取り敢えずほっと息をつく。それと同時に腹が悲痛な音をたてた。

「あー、そういや、夕方からなにも食ってねぇ……」

腹が減ったことを認識した体から一気に力が抜けていく。

不意に、扉の向こうから出汁の効いた良いにおいが漂ってきた。

そっか、梓が夜食作ってくれてんだっけ。

このにおいだと……出汁の効いたスープ、麺類かな?

「あぁ、畜生。めちゃくちゃ腹へったぁ!」

きっともう「いただきます」をしているであろう能天気な紬を想像して、俺はなんだか出遅れた気分になる。

ちゃんと小分けにしてあることを願いながら、俺は扉に向かってダッシュした。

逃すわけにはいかない。何せ、梓の飯は人気が高いのだ。
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