水玉模様
「なんか、腕組んでるっていうより、森さんに引っ張られてるカンジー?篠田くんかわいそ。尻に敷かれてるよ、絶対。」

「…はは。」

あたしは、愛想なく笑った。

あの花火大会の後、夏休みの間は数回メールのやりとりをしただけ。

あたしからは……できなくて。

伝わらなかったとはいえ、『すき』の2文字を言葉にしてしまってから、変に意識してるあたし。

朝から気分悪くなる。

「悠、早く!」

森さんにぐいぐい腕を引っ張られて、あたし達の横を通りすぎていく篠田くん。

そこにあたしの入り込む隙間は、ないのかな…。

あのデートは、何だったんだ…。

「…。」

笑った…?

一瞬だけど…あたしを見た?

微かだったけど、あたしに笑いかけたーーー?

とけたと思っていた魔法は、まだ余韻を残していたりするのかな…。

それに、森さんはきっと知らないーーーあたしと篠田くんが花火大会に行ったことを。

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