水玉模様
抱き締めてしまいたくなるから。

泣いてしまうかもしれないから。

いつまでも、触れていたいと思ってしまうから…。

そんな風に…あたしの気持ちが、抑えられなくなってしまうかもしれないから。

多分、溢れて…こぼれてしまう。

グラスに水を、注ぎすぎたみたいに…。

落ち葉で地面が、隠れてしまうくらい…。

“好き”が、止まらなくなる…。

何でも話せる充也にでも、こんな女の子なあたしを知られたくないのは、ただの強がりかもしれない。

でも今の篠田くんには“沙耶香”がいるから、あの日を最後に、昇降口で篠田くんの姿を見ることはなくなった。



ーーー遡(さかのぼ)るのは、

「充也、どうだった?」


高1―――3月。

終業式が終わり、解放感からみんな我先にと帰っていく。

あたしは充也と成績の話をしていた。

「まぁまぁ、だな。」

「そぉだろうね。」

充也は、遊んでるくせに賢い。

一体いつ勉強してるんだか…。

「あたしは、親にあわせる顔がないよ。」

通知表で宙をたたいた――…。


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