誰も知らない、君に釘付け。〜彼の隠れた裏の顔〜
「いったたた…
ご、ごめんなさい。前見てなくて…」
ぶつかった弾みで、床に尻もちをついた私。
恐る恐る視線を上げると。
「な、夏木くん…」
どうしよう、ものすごく怒ってらっしゃる!?
それに、なんだお前かよって分かりやすい顔してる……
「あ、栖和さんだ」
ワンテンポ遅れて、顔色を変える夏木くん。
いや、私にはもう、君が輝いて見えない。
「きちんと前見て歩かないと…」
そう言って、すっと手を伸ばす夏木くん。
あ……なんだかんだで学校では優しいのかな…
私が手を掴もうとすると、夏木くんはひょい、と上にあげて、その場にしゃがみ込んだ。
「次ぶつかったら、どうなるんだろうな?」
「……なっ」
私は、思いきり顔を引き攣らせた。