誰も知らない、君に釘付け。〜彼の隠れた裏の顔〜
笑顔で話しかけてきたのは、夏木くんだった。
「んー?愛果の恋愛相談?」
「ちょ、ちょっと紗奈っ」
冗談だって分かってるけど、慌てて否定した。
「へえ?そうなんだ。
俺も聞きたいな」
だ、だから違うんだって……
そう言いたくても、表向きの夏木くんと会話することなんて滅多にないから…
どう返答すればいいのか、分からない!
「てか、たくさんジュース買ってる!
もしかして、私達にもあるの?」
「あー……うん、ちょっと買いすぎたから。
いいよ、もらって」
「やった!私これっ」
話をがらっと変えてくれた紗奈は、嬉しそうにジュースを手に取った。
「栖和さんは?」
「え?」
思わず間抜けな声が漏れた。
話しかけられるなんて思わなくて、油断してた……
「じ……じゃあ、これで」
適当に紙パックを選んで取る。
……あ、どうしよう。
絶対いまの、不自然だったよね……?
夏木くんの様子を見たくても、怖くて見ることが出来なかった。