二度目は誠実に
お断りします
目が覚めたら、見知らぬ人とホテルにいた。

なんて、話はそうそうあるものではない。

では、目が覚めたら、同僚とホテルにいたはありがちな話だろうか?


***


大石拓人(おおいしたくと)は部屋の外から聞こえた微かな物音で目を覚ました。見える天井は自分の部屋のものではない。

隣で丸くなって寝ている谷沙弓(たにさゆみ)の髪をゆっくりと撫でて、昨夜のことを思い出す。

昨夜は総務部の送別会だった。拓人は『コロアールマーケティング株式会社』に入社してから7年勤めた総務部から人事部へ異動することになった。人事部は来月から立ち上げる新しい部だ。

今までは総務部に人事課があったが、独立した部になった。拓人の他にもう一人、総務部から人事部に動く人がいる。

人事部長となる柴田要(しばたかなめ)である。拓人と要は同じ高校の出身で、拓人は要の一つ後輩である。共に生徒会活動をしていた。

拓人はいつも要には敵わないと思っている。頭脳においても、容姿においても要のほうが上だからだ。

それに、要のほうがモテる。送別会でも要はたくさんの女性社員に囲まれていた。
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