二度目は誠実に
「いてっ。なんだよ」


床に転がった拓人は全裸という哀れな姿である。沙弓は見てはいけない部分が目に入り、一瞬目を背いた。


「は、早く服を着てください。課長のことは約束通り、ちゃんとフォローするので、安心して人事部に行ってください。今までありがとうございました」


沙弓は転がっている拓人の上半身だけに目を向けて、淡々と話して、ベッドの中に潜った。

ベッドの中からまだ沙弓は話す。拓人は服を着ながらそれを聞く。


「服着たらすぐ出ていってくださいね。出て右に歩いていけば駅が見えますので、ここがどこか分かると思います」


「ねえ、谷。俺、そんなにも嫌われたの？」


「玄関の鍵はそのままでいいです。オートロックなので」


沙弓は拓人の問いに答えないで、必要事項だけを話す。早くここから出ていって欲しいのである。

今日は土曜日。貴重な休日を邪魔されたくない。拓人を欲しいと言ったバカな自分に何度も後悔するが、寝たことは自分だけでなく拓人の記憶からも消したい。


「今日のことは忘れてください。私も忘れますから。お願いします」
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