二度目は誠実に
なんとか約束できた拓人は沙弓の手を離して、ニッコリと笑った。

やられたー!

先に戻っていく拓人の背中を見送ったあと、沙弓は心の中で叫んだ。

なぜか拓人のペースに逆らえない自分に腹が立つ。ハッキリと断ったはずなのに、つい流れで約束をしてしまった自分に腹が立つ。

悪いのは拓人ではなくて、自分だと自己嫌悪に陥る。とりあえずこれ以上の約束はしないようにしなくてはいけない。


「あ、谷さん。お疲れさまです。もう引き継ぎは終わったんですか?」


「うん、課長の面倒を見るだけだから、簡単な引き継ぎだったしね。内田くんのほうが大変でしょ? 頑張ってね」


沙弓は拓人から預かったファイルを胸に抱えて戻る途中で、話題に出てきた純太と会う。


「頑張ろうとは思ってはいるんですけど、全然自信がないです。俺、今までもミスが多かったけど、それを大石さんがフォローしてくれたから、なんとか乗り越えてきたのに……大石さんがいなくなるなんて、どうしたらいいのか……もう不安だらけですよ」
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