二度目は誠実に

純太の声は段々と弱くなっていく。気持ちは分からなくはない。

それだけ総務部での拓人の存在は大きくて、異動を惜しむ声が多い。

「一つ一つ丁寧にやって、ちゃんと確認すれば大丈夫だよ。何かあればいつでも聞いて。私で分かることなら、見ること出来るから」


沙弓の頼もしい言葉に純太は目を輝かせる。


「あー、もう！ 谷さん、優しいです！ 谷さんは俺の女神です！」


「えっ？ いやいや、そんな立派なものではないし」


「おーい、内田ー。ちょっと来てー」


「あ、はい！ 今行きます！」


沙弓の優しい心遣いに純太は嬉しくなり、抱き付きそうになっていて、それを察した沙弓は後ろに下がりかけていた。

そのとき、拓人が純太を手招きする。

緩んでいた純太の顔が強張り、急ぎ足で拓人の元へと行く。沙弓はホッとして、自分のデスクに向かった。


「なんでしょう？」


「さっきさ、コロアールの斉藤さんから電話があったんだけど」


「えっ、斉藤さん？ あー！」


「思い出したみたいだね。まあ、怒ってもいなかったから大丈夫だよ。電話してね」