二度目は誠実に
大嫌いです
春は忙しい人が多い。

拓人も沙弓も例外ではなく、忙しく動いている。拓人は新人研修に追われていた。

人事部には人事部長である要が気に入っていた新入社員が配属されたが、拓人は別の新入社員が気になっていた。

販売戦略部に配属された三上柊花（みかみしゅうか）である。


「三上さん、分からないことがあったら何でも聞いてねー」


「はい、ありがとうございます」


目鼻立ちがくっきりして美人といえる柊花は、礼儀正しい。そんな柊花は拓人の好きなタイプそのものだったので、沙弓のことを忘れて……接近した。


「ねえねえ、三上さん。今度一緒にご飯食べない？」


「ご飯ですか？」


「うん、三上さんに食べさせたいものがあるんだけどね」


「失礼しまーす。大石さん、足りない資料を持ってきましたけど」


柊花を誘うことに夢中になっていた拓人は新人研修の場である会議室のドアが開かれたことに気付かなかった。

常に周りの動きに目を光らせている拓人にしては失態である。
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