二度目は誠実に
総務部を出ていくときの沙弓は普通だった。それなのに戻ってきたら機嫌が悪そう。

純太と課長は何事があったのかとおろおろする。二人ともそれぞれがなにかミスをしたのかと心配になっていた。

沙弓は両隣に立つ純太と課長を交互に見て、小さくため息をつく。そんな様子を見て、二人はますます青ざめる。


「なんでもないです。お二人は何もしていませんから、安心してください」


「ほんとに? 大丈夫?」


純太はホッと胸を撫で下ろしたが、心配性の課長はまだ心が休まらない。


「本当です。私の問題ですから、気にしないでください」


課長はやっと納得をして自分のデスクに戻る。沙弓はやっと離れた課長を横目で見て、頬杖をつきながらパソコンの画面を見る。

ただ見ているだけである。

頭の中では拓人が誘っていた新入社員のことを思い出していた。

外見が沙弓とは全然違うタイプだった。

ああいう美人が拓人の好みなら、自分と付き合いたいと言ったのはやっぱりただの気まぐれだったのではないか……。
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