二度目は誠実に
考えれば考えるほど、イライラする。沙弓は突然立ち上がって、周囲に見渡した。

課長がまた何事かと心配そうに見ている。沙弓は課長と目が合ったので頭を下げて、パソコンの近くにあったマグカップを持った。

コーヒーを朝イチで淹れていたが、今は空で底が茶色く残っていた。それを持って、給湯室へ行く。マグカップを洗って新しくコーヒーを淹れる。


「あ、ここにいたんだ」


聞こえた声に振り返るとイライラの原因がそこにいた。


「お疲れさまです……」


「なんだか暗いね。何かあったの?」


自分が原因だと分かっているのだかいないのだか……拓人は呑気に沙弓の心配をする。

呑気な顔の拓人に沙弓はまた苛つく。


「別に何もありません。それよりまだ研修中じゃないんですか?」


もう休憩時間は終わって研修が再開されているはずだ。こんなところに顔を出している暇はないはず。


「今は、部長が説明してるから俺は、空き時間ってヤツかな。谷と話したくなって来ちゃった」
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