二度目は誠実に
「えっ? 大嫌い?」


思いもよらなかった言葉に呑気な拓人でも唖然とする。


「はい、大嫌いです」


キッパリと言い切った沙弓は湯気が出ているマグカップを持って、拓人の前を通りすぎる。

思いもよらない状況にいまだ呆然としている拓人はその場に一人残されてしまった。

駆引きは失敗に終わった。

いや、ここで諦めはしない。まだいける。嫌われているとは今まで一度も感じたことはない。好かれているとも思ってはいなかったが。

言われたばかりの大嫌いという言葉は信じたくない言葉だったので、考えないようにした。

拓人は少し間をおいて、またあとで沙弓に接近しようと考える。今何度も追いかけてもそれは逆効果になる。

それに、実のところ今は、忙しい。1日くらいならなんとかなると思い、つい柊花を誘ってしまっていたが。

拓人は沙弓を追うことをしないで、会議室に戻る。空き時間だと沙弓には話したが、空き時間でもやることはあったのだ。

こっそりと会議室を出ていったら、戻るときもこっそりと戻った。でも、要はそんな拓人を怪訝そうな顔で見た。
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