二度目は誠実に
今日の研修が終わり、拓人が持ち帰る書類を片付けていると、その横に要が来た。


「お前、突然抜けてどこ行ってた? トイレにしては長かったし」


「ちょっと総務に行ってました」


「総務? なにか急用でもあった?」


「まあ、そんなとこです。それよりも明日の専務の講話ですが」


追及されたくない拓人は話題を変える。しかし、話題は戻される。


「話をそらすなよ」


「要さーん、俺今かなり落ち込んでいるので、聞かないでくださいよー」


考えないようにしたいと思っても、沙弓に言われた「大嫌い」が何度も頭の中で繰り返された。

なんだよ、大嫌いって。そこまで言うことないじゃないか。

普段深く考えないで、明るく振る舞っている拓人でもさすがに「大嫌い」にはへこんでいた。


「拓人。……おい、拓人」


「あ、はい」


「珍しく思い詰めた顔してるけど、大丈夫か?」


「要さんが俺を心配してくれるなんて、また珍しいですねー。そうだ! ステーキでも食べたら元気になると思うんですよ。ぜひ奢ってください!」
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