二度目は誠実に
「別に大石さんからもらいたいほどの欲しいものはないですね。わざわざしてもらいたいこともないです」


「遠慮するなよ。俺と谷の仲なんだから、何でも言っていいんだぞ」


ほら、言え、言ってみろ、なんでもいいから言って。

拓人は言葉だけでなく体全体でなにか言ってー! とおかしなジェスチャーで要求する。

沙弓はどうせなら無理難題をふっかけてみようと腕組みをした。相手にするのも面倒だから諦めてくれるように。

かわいい顔で腕組みをする沙弓は、意地っ張りな子供に見えて、拓人はかわいいなーと満面な笑顔で見つめている。

沙弓は拓人のそんな心知らず、必死に考えていた。拓人も沙弓が悪巧みをしているとは思ってはいないが。


「ん? 決まった?」


テーブルの一点を見つめて、腕組みしていた沙弓が拓人の顔を鋭い目で見る。


「大石さんが欲しいです。くれます?」


「へ? 俺? どういう意味?」


「そのままの意味ですけど。ずっとなんて言いません。ずっとはいらないですからね。今夜だけとか一晩でいいです」


「は? 本気で言ってるの?」
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