二度目は誠実に
「じゃ、お疲れさまでした」
沙弓は先に降りて、足早に歩く。拓人は慌てて、沙弓の横に並んだ。
沙弓は目線を一瞬だけ拓人にうつしたが、何も言わずに歩みを進ませる。
「駅まで一緒に行こうよ」
「嫌いな人と歩きたくないんですけど」
「そう、はっきりと言わないでよー。俺だってさ、これでも傷付くんだよ。分かってる?」
「分かりません」
いつもへらへらと笑う拓人が傷付くなんて、あり得ない。沙弓は分からないし、分かりたいとも思わなかった。
早足で沙弓は歩くが、沙弓よりも背が高く、歩幅の大きい拓人は容易に追い付く。沙弓はまたしても隣に並ぶ拓人に訝しげな視線を送った。
しかし、相手にしなければいいと思い、敢えて何も言わないで駅へと急ぐ。方面が違うから駅まで行けば、必然的に離れられる。
「キャッ……」
「あぶなっ!」
駅の入り口の目の前まで来たとき、前方から小走りしてきた男性が沙弓の右腕辺りに大きなボストンバッグをぶつけた。
ぶつかった調子に沙弓が横によろけたから、転ばないようにと拓人が左肩をつかんで支えた。
沙弓は先に降りて、足早に歩く。拓人は慌てて、沙弓の横に並んだ。
沙弓は目線を一瞬だけ拓人にうつしたが、何も言わずに歩みを進ませる。
「駅まで一緒に行こうよ」
「嫌いな人と歩きたくないんですけど」
「そう、はっきりと言わないでよー。俺だってさ、これでも傷付くんだよ。分かってる?」
「分かりません」
いつもへらへらと笑う拓人が傷付くなんて、あり得ない。沙弓は分からないし、分かりたいとも思わなかった。
早足で沙弓は歩くが、沙弓よりも背が高く、歩幅の大きい拓人は容易に追い付く。沙弓はまたしても隣に並ぶ拓人に訝しげな視線を送った。
しかし、相手にしなければいいと思い、敢えて何も言わないで駅へと急ぐ。方面が違うから駅まで行けば、必然的に離れられる。
「キャッ……」
「あぶなっ!」
駅の入り口の目の前まで来たとき、前方から小走りしてきた男性が沙弓の右腕辺りに大きなボストンバッグをぶつけた。
ぶつかった調子に沙弓が横によろけたから、転ばないようにと拓人が左肩をつかんで支えた。