二度目は誠実に
同じくサラダの味を知っていた純太が言う。沙弓は頷いた。


「へー、そうなんだ。それは楽しみだな。谷はよく来るの?」


拓人は1度もこの店に来たことがなかった。噂に聞いてもいたし、ここにあると場所も知っていた。だけど、食べる機会を逃していたのだった。

初めて食べるランチに拓人は心を踊らせている。


「はい、おまたせしました」


それぞれが丸いどんぶりの蓋を取る。店内に充満しているだしの香りをさらに強く感じる。

沙弓と純太はサラダから食べたけれど、拓人は親子丼から食べる。


「うまっ! まじでうまいな」


「でしょ? サラダも美味しいですよ」


目を丸くして、興奮しながら食べる拓人に沙弓も興奮して答える。自分が美味しいと思うものを美味しいと思ってくれるのは嬉しい。

だけど、沙弓はすぐ意識を正常に戻した。

今、何を言った? 何してるのよ、私!

なに話かけているの!

バカじゃないの?

自分で自分を叱る。
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