二度目は誠実に
予想外の要求だった。拓人は沙弓が一夜限りとか出来る女ではないことを知っている。だから、沙弓の言葉が信じられなかった。

沙弓は沙弓で拓人を試していた。一つの賭けでもある。

ふざけたことを言ったり、からかったりする人だけど、誠実な人だと心の中でこっそり拓人のことを尊敬していた。だから、自分が言ったバカなことに乗ることはしないだろうと思った。


拓人は沙弓と同じように腕組みをした。沙弓の真意を探ろうとじっと見る。

沙弓は拓人の視線にたじろいだが、顔色は変えないで返事を待った。

お願いだから、諦めて……沙弓の本心である。拓人はそれを感じ取れるのだろうか。


「分かった。じゃ、今夜よろしくね! 谷の希望通りにしてあげるから、課長のことは頼むよ」


沙弓の本心を拓人は感じ取ることが出来なかった。

人を試すものではない、賭けなんてするものではない。

今さら後悔しても遅い……諦めたのは沙弓のほうだった。

なるようになれ!

そんな気持ちで沙弓は拓人を自分の部屋に迎え入れたのだった。
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