二度目は誠実に
課長に褒められて、沙弓は首を横に振る。純太が成長したのは純太が頑張ったからであって、自分のおかげだとは思ってもいない。

拓人は本気で謙遜する沙弓を見て、頷いた。


「やっぱり谷は真面目だよね。他人よりも自分に厳しいよね」


「だって、後悔したくないじゃないですか?」


「えっ? 谷さんは今まで後悔したことないんですか?」


沙弓の発言にすぐ反応したのは純太だ。珍獣でも見ているように目を丸くしている。そんな純太に沙弓は苦笑して口を開いた。


「そんなわけないでしょ? それなりにいろいろ後悔はしてきてるよ。後悔することばかりだし」


「じゃ、一番最近後悔したことは何ですか?」


「一番最近に後悔したこと? ……あっ、いや、えっと、この前焼き肉を食べ過ぎたことかな」


先週、確かに焼き肉をお腹いっぱい食べた。だけど、美味しかったから後悔はしていない。満足した。

後悔したことで沙弓の脳裏にすぐ浮かんだのは隣に座る拓人とのこと。拓人と寝たことを後悔している。でも、それをここでは言えないから、無難に食べ過ぎたことにした。
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