二度目は誠実に
純太は「そうなんですね」と頷くが、拓人は食べ過ぎという答えは嘘だと見抜いていた。それと、本当の後悔は自分とのことだとも思った。

一瞬言葉に詰まった沙弓がチラリと拓人を見たからだ。

自分とのことを後悔しているとは、心外だ。沙弓が望んだからしたまでなのに。


「谷。あのさ……あっ、ちょっと失礼します」


そのとき、拓人の会社用携帯が鳴った。相手は要である。応接室の隅に行き、声を潜めて応対した。


「谷さんは細いから、食べ過ぎたくらいがちょうといいと思うよ」


「課長、そういう言い方はセクハラになるらしいですよ」


「内田くん、大丈夫だよ。セクハラだなんて思わないから。課長、安心してください」


沙弓は、純太の言葉に青ざめた課長を笑いながら宥めた。心配性の課長は沙弓の言葉に安心したが、「気をつけるよ」と弱々しく笑った。


「ちょっとこれから出なくちゃならなくなって、申し訳ないんですが、ここで失礼します」


通話を終えた拓人が課長に頭を下げて、沙弓と純太にも「悪いな」と言って、慌ただしく出ていった。

拓人がいなくては応接室にいる意味がないので、三人とも業務に戻る。
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