二度目は誠実に
沙弓は拓人が自分に向かって何かを言いかけていたのを気になってはいたけれど、多分たいしたことではないだろうと思った。

課長や純太のいる場で言われなくてよかった。もしかしたら、対応しにくい話だったかもしれないから。



「悪いな、急に呼び出しちゃて」


「いえ、呼び出したのは要さんじゃなくて向こうでしょ？」


「まあ、そうなんだけどね。野々宮、出掛けてくるから留守番よろしく『


「はい、分かりました」


要は新入社員である野々宮夕美に軽く手をあげて、カバンを持った。拓人は「行ってくるねー」とにこやかに手を振った。

三人しかいない人事部は新入社員である夕美だけが一人残ることが多い。新入社員とはいえ、しっかりしている夕美は要にも拓人にも信頼されている。だから、二人は夕美に任せて安心して出掛けることが出来ていた。


「私情を交えてはいても、野々宮さんで良かったですね！ 要さんの見立ては間違っていないですよねー」


「お前、いちいち一言余計だよ」


要は人事部長の権限で夕美の配属先を決めていた。
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