二度目は誠実に
拓人は入るなり「普通の家みたいな狭いホテルだねー」と言いながら、二人掛けのローソファーに座る。ホテルだと思い込んでいた。

だから、目が覚めたときもホテルの一室だと思っていた。


意識は正常に働かなくても自分が抱いているのは沙弓だとしっかりと認識していて、ちゃんと一緒に果てた。

沙弓を抱いた記憶もハッキリとある。すべすべの肌は気持ちが良かったし、沙弓の中は熱かった。初めて聞く甘い声も心地良かった。

悪くない……と拓人は思った。恋愛感情はなかったし、抱いた今でも好きかと聞かれたら、どうかな? と首を傾げるだろう。

でも、嫌いではないし、寝てから始まる恋愛もありなのではないかと何度も沙弓の髪を撫でながら思った。

始まりの形は、様々でいくつもある。お互いパートナーはいないから、これを機会に付き合うことを考えてもいい。案外うまくいくかもしれない。

体の相性は良かったはずだし。それに関しては同意してくれるだろう。


沙弓が髪を撫でられる感触で目を覚ます。


「あ……」


「おはよ。起きた?」
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