二度目は誠実に
横向きに丸まって寝るのは沙弓の癖だが、目が覚めたときに肌色の壁があり、頭を上に向けると拓人の顔があり、いつもと違う目覚めの光景に昨夜のことを思い出す。

欲しがったのも連れて帰ったのも沙弓だったが、ベッドの上での主導権は拓人にあった。ローソファーで隣に座るとアルコール交じりのキスをされ、そのキスに酔っているとベッドに運ばれた。


まさしくなるようになれ! で拓人に全てを任せたが沙弓も同じように気持ち良さを感じていた。

でも、拓人のようにここから始めてみようとは思っていない。

二人の気持ちは同じではない。


「ねえ、ここどこ?」


「私の部屋ですけど」


「えっ? あー、そうか。ホテルじゃなかったんだ、そうか、なるほど。谷の部屋かー、いい匂いがするね」


女子らしい甘いフローラルな香りに拓人は鼻を動かす。


「変態ですか?」


「いや、至ってノーマルだよ。昨日も変な行為はしてないだろ?」


「昨日のことは忘れてください。この部屋のことも忘れてください」


沙弓はまだ拓人と肌が触れあっている状態なのに、記憶から追い出せと訴える。
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