二度目は誠実に
拓人は髪を撫でていた手を沙弓の背中に回し、自分の方へと沙弓を引き寄せた。二人はまだ全裸で拓人の胸に沙弓の柔らかい胸が当たる。

二人の心臓は同時にドクン! と跳ねた。


「なっ! 離してください」


「逃げるなよ。俺思ったんだけど、ここから始まるのもありだなと」


「はい? どういう意味ですか?」


「谷とこんなふうに朝を迎えるなんて、全くの想定外だったけど、悪くないなと思ったんだよ。これも一つのきっかけかなと思うわけ。分かるー?」


分かるかと聞かれても、沙弓は何を言おうとしているのか分からなかった。しかし、密着する体に危険を感じたので、必死で腰を引いていた。


「どんなきっかけなんだか……」


「良いきっかけだと思わない? せっかくだし、うん。せっかくだから、付き合う? どう? 悪くないでしょ?」


「いえ、お断りします」


せっかくだから、付き合う? だと!

何を言うんだ、この男は!

沙弓はバカなことを言う拓人の胸を想いっきり押した。足も使ったから、拓人はゴロンとベッドから転がり落ちた。
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