東と西の恋

非日常の始まり

ピ、ピピピ…ピピピピ

「ん、今起きるー」

眠たい眼をこする今は、夜中の12時半だ
仕事へ行く準備をする。

私専用に作った仕事着に着替える。
私の仕事着は和服。
でも、邪魔になったこともないし逆に動きやすい。 これには、特別な術がかかっており治癒力とかが上がるようになっている。

それに何と言っても可愛い♪
巫女さんの服をモチーフにしている。

上の白い着物の上に透けた素材の銀色にキラキラ光る着物を着る。
袖には赤いリボンで縫われていて最後にリボンが垂らされているんだけど端に音はしないけど鈴が付けられている。

赤の袴はプリーツスカートのミニみたいで
飾りとして魔除けの翡翠が付いている。
脚には、赤いリボンを交差してひざ下から足首まで編んでいく。

浴衣で履く黒塗りの下駄をかかとから離れないように足首まで編んだリボンをわざわざ裏にほった溝のところで結ぶ。

最初は手間取ったけど今じゃお手の物。
邪魔なメガネ、三つ編みを解く。

あとは、舞用の扇を懐に入れ 愛用の自分の背丈ほどある弓を専用の袋に入れ折りたたみ式の薙刀を持つ。
よし!これで準備オッケー。

「行ってきまーす」

そう言って家を出る。
私の仕事場は今通っている彩凪(あやなぎ)高校だ。

この学校は昔から妖が集まりやすくそれを代々その地域に住む陰陽師が祓っている。

私達陰陽師は全国に案外たくさんいて
それぞれ依頼などの仕事を請け負ったり
自分が住んでいる街を守ったりしている。

たまに援護に行ったり、親睦を深めるため
その家の当主と後継者で集まって会合を開いたりする。

結構大変だったりする。
まぁ、私は楽しくてやっているんだけどね。

なんだかんだで20分程で学校に着き門を飛び越える ここの学校の理事長にはもう話はつけてあるので心配はいらない。

スペアのキーで鍵を開け学校の中に入る。
変な奴でも入ってきたら嫌なので鍵を一応かけとく。

1時前、学校の中に入ったら暗闇の中でも周りが見える暗視の術を使う。
さてと、見回りますか。

見回っていると、

「げっかー!」

「何っ!舞姫だと!」

「月華姉(げっかねぇ)だー」

と子鬼や害にはならない妖が集まってくる。
この子たちはこの学校を住処にしている。
害にもならないので祓わないでそのままにしている。

そして何故か、陰陽師の私に好意を抱いてくれている。

「みんな、こんばんは」

「ねえねえ、月華姉また舞を見せてよ!」

とキラキラした目で私を見てくる小学生くらいの背丈の子鬼は空(くう)だ 。
私が名づけた空色の髪がとても綺麗だったからだ。

「仕事が終わったらね また、誰か来た?」

と尋ねる この子たちには、住処を守る代わりに情報提供をしてもらっている。
結構ありがたい。

「ん〜 あっ!そういえば何人か来てるよ」

と、場所をいくつか教えてもらった。

「ありがと 仕事が終わりしだい屋上に行くから待ってて」

「うん!わかった!」

と言って極上の笑みを私に向けてくれた
あぁ、なんて可愛いのだろう。
空の頭をなで教えてもらった場所を重点的に見回りを再開する。


………………☆

大体こんなもんかな新しく来た妖は、いろいろ話して悪意はないし、あっても説得したので収まった。

こんなもんかな さてと、屋上へ行きますか
今回の見回りも終わり屋上へ向かう。
いつも妖に舞をせがまれて舞っている。

舞は、小さい頃おばあちゃんに教えてもらって結構頻繁に舞っている。
その為に舞扇を持っている。
綺麗な扇でかなり気に入っている。

これも、おばあちゃんに貰いボロボロになったらわざわざ専門店へ行って直してもらう。
かなり大事にしている 私の大切な宝物だ。


屋上へ行くとそこには、もう妖達がいた。

「舞姫!早く舞を見せておくれよぅ」

と言ってせがんでくる。

「はいはい 分かったわ」

扇を広げ舞い始める。
今、舞っている舞は私が作ったもの。
かと言って変なものではない。
厳しかったおばあちゃんにとても褒めてもらえたものだ。

水がサラサラと流れるように、
優しく、
とても神秘的でまるで一輪の華が咲いているよう。
まさにその華はこの世に咲かない月華のごとく。

舞いながら言の葉を紡ぎうたう。

『闇夜に輝きし地に咲く華
蒼く美しき石 穢れるとき神の子心を洗われ 白き光に守られん
闇夜に輝きし地に咲く華
神の子の心洗い流し、神の子を白き光で守らん
その光、美しき光なり
神さえも癒やす光なり
その光闇夜に輝く白銀の石そのもの
また、その美しき華を持つ者
美しく
心を癒やすがごとく
艶やかに
清らかに
強く
とても優しき力を持ち世に安らぎを対の者と ともにもたらさん
その者 闇夜に輝く白銀の石の化身なり』

このうたは、何故かこの舞を舞っていると
頭に浮かぶもの。
気がつくといつの間にかうたっていることが多いので今ではもう気にしない。

舞い終わると妖達は、うっとりとした顔をしていた。

「いやー いつ見てもいいなその舞は」

「舞いながらうたう月華は特別美しいな」

妖達が口々に絶賛する最初は照れたが
今では慣れた。
時計を見ると3時半になっていた。

「ありがとう それじゃ今日はもう帰るね」

「おうよ!」

「また明日ねー」

と言って見送ってくれる。
眠い……早く帰って寝よ。
学校を出ると急に睡魔に襲われさっさと家に帰る。

私はその時気づかなかったこれから近づいてくる波瀾万丈な日々に。




その頃月華の舞を見ていた者が一人。

「ますます気に入った」








翌日…………☆

「うぅ、眠い…」

眠気を必死に我慢しながら学校に向かう。
もちろん、三つ編み、メガネ、マスクはしている。
学校に着くとある噂が立っていた。

「ねえねえ!聞いた?」

「聞いた!聞いた!転校生でしょ!」

「そうそう!何でもイケメンらしいよ」

「それで京都から来たんだって!プラス帰国子女!」

と、キャッキャウフフ♡している。
イケメンの何がそんなに楽しいのやら。
理解不能。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴る。
すると、気だるげに担任が入ってくる。
五十嵐 拓斗(いがらし たくと)だ。

いつも、ぼさっとした髪 やる気のない態度。
多分…いや絶対教師という職業が似合わない
人物だ。

「席につけー
えっと、何だっけな。
あ!そうそう。
今日転校生がうちのクラスに来た。
仲良くしてやれ。 じゃあ、東雲入れ」

ん?なんか聞いた事あるような名前……
まさかね!ないない

ガラッ

あり得ないって!今どき少女漫画でもこんなんないからっ!
扉から入ってきた人物はまさしく昨日会った変態ヤローだった。

「東雲彰 どうぞよろしゅうしてな」

と無駄に色気を振りまいたその瞬間

キャーーーーーーーーーーーー!!!

近所にも聞こえるくらいの黄色い悲鳴を女子達は出した。

み、耳が痛い…

「あとよろしくー じゃあ」

おい、待てコラ教師が職務放棄してどーすんだよ!このあと絶対嫌なこと起こるって私の感が告げてんだよ!だから行くなー!
お願い…行かないで トホホ。

休み時間……

あっという間に女子に囲まれている。

「ねぇねぇ、東雲くんてぇ彼女いるのぉー?」

「どこの部活はいる?」

「学校の事わかんないだろうから私案内してあげる」

「ちょっとズルいわよ!」

「そうよ!それより私が案内するわ」

と、あれよあれよという間に争奪戦が勝手に始まった。
恐ろしや女子。

「ん〜 じゃあ俺決めてもええかな」

と言って何故か私のところへ来る。
え?え?なんで!こっち来ないでよー!
ポンと肩に手を置かれ。

「お願いします 月華ちゃん」

指名されました。
痛い 女子の視線があまりにも痛い。
今この時私はクラスの女子全員敵に回してしまった。








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