東と西の恋
放課後
放課後………☆
女子達に睨まれながらやっと放課後になった。
せ、精神的にキツかった。
それもこれも全部隣にいるこの男のせい!
東雲彰は、ニコニコとしながら私の隣を何食わぬ顔で歩いている。
「みんな優しいな」
「はいはい そうですね!」
人の気も知らないで!
「なんや冷たない?」
「そうですかね!」
「ほら、そういうとこが まぁそんなとこが気に入ったんやけど」
「あんたみたいな奴に気に入られても迷惑!」
とりあえず聞かなければならない事がある。
「ちょっと来て」
と誰もほとんど来ない特別教室に入る。
一応入られないのと防音といることを隠すために結界を張る。
「来ない人気のないとこ
まさか!月華ちゃん俺を襲う気……」
「誰があんたを!!!」
ダメだ コイツとまともに話してもこっちがイライラするだけだ。
深呼吸して気持ちを落ち着かせ本題に移る。
「あなた、何が目的」
「何て、何が?」
「だから、なぜこの学校に来た 昨日の事言いふらしに来たの それとも脅し?」
そう言うとキョトンとした 。
そしてすぐ、プッと吹き出して笑った何故?
「アハハ 違う 違う なんで気に入った子脅さんないけんの 俺は、普通に親に引っ越すから転校先決めろてゆわれたから あんたがおるここにしたんや ただそんだけ
あ~おかし 傑作やなぁ」
なんか、笑われて少しイラッとする。
「何で私なわけ」
「だからさっきから言ってるやろ 気に入ったて さっきから思うとるんやけど軽くスルーしてへん?」
「それにあなた一体何者?」
ヴァンパイヤの東雲彰だという事は、分かるが素性がどういう人なのかは分からない。
「またスルーした……
ん〜 ヴァンパイヤの王家的な? でも王やっんはえらいとっくの昔やったし、ただ唯一特別な事は俺が俗に言う王子で始祖やってくらいかな」
今は血が薄くなると同時にヴァンパイヤ本来の力が薄くなっりそれと同時に昼間太陽が出てても灰にならない。
始祖とは、純血よりも濁りのない力。
つまり簡単に言うとかなり強い力だ。
案外コイツ危ないヤツ!!
でもあれ?
そこで何かが引っかかった。
「じゃあ何で昼間元気なの?」
普通、ヴァンパイヤとは力が強いほど
太陽やニンニク、十字架などに弱いものだ。
ましてや、先祖帰りで始祖と同じ力を手にしているのにこいつは昼間元気だ。
なぜ?
「そこら辺は俺にもようわからん
なんのダメージもあらへん
普段は強すぎるから抑えてるし
まぁ、楽しければそれでええやん」
おいおい、それで良いのかよ!
思わずツッコミたくなる。
思わず呆れてため息をついていると
「なぁ、こんなおいしい場面なかなかなあらへんしこんな話よりももっとええ事せえへん?」
「へ?わぁ!」
また、不意打ちで抱きしめられた。
「ほんと月華ちゃんはええ匂いがするなぁ うっとりするくらいの」
と言って首筋に顔を埋めてくる。
正直言って息があたってくすぐったい。
必死に暴れてるのに東雲彰の腕は、全く緩まない。
そうして私のめがねやマスク、髪のゴムを外す。
「ちょっ!やめ、どこ触ってんの!」
訴えるが聞いちゃいない。
片手は私の髪をすいてもう片方の手は器用にも私が逃げられないようにしながら体を触ってくる。
「それにこんな可愛ええのにどうして隠すん?もったいない」
「っ!」
いい声で耳元にささやくので頭がクラクラしてくる。
私自体今まで陰陽師の仕事で毎日大変だったから恋なんてものはした事無いし ましてや、こういうことに免疫は全く無い。
その時感じた。
黒い気配が学校で一つ生まれた。
多分これは昨日新しく来たヤツ。
場所は………体育館!
「これは……案外デカいな」
気配に気づいたのか東雲彰がのん気に言う。
そして、開放してくれた。
開放してくれた途端私は、体育館へ向かう。
ヤバイあれは東雲彰が言ったようにかなり強い。
こののままじゃ、被害が出る。
その前に止めなきゃ!
ラッキーなことに今日はどこの部活も無く、ほとんどの人が帰った。
体育館に着くとそいつはいた。
それは、一人の女性がシクシクと泣いていた。
「どうして、どうして来てくれなかったの」
昨日彼女から話を聞くと前世彼氏とデートの待ち合わせをしていて2時間待っていても来ず帰ろうとしていた矢先彼氏が他の女性と仲睦まじく歩いているのを目撃し、帰ろうとしたその直後昼間から酒を飲んでいた車が突っ込んできた。
そして未練タラタラでこの世にいると 。
でもなぜ昨日説得して落ち着かせたのになぜ?
「どうしてあの女を選んだの」
彼女が一言言うたびに黒い瘴気を纏っていく。
「もう止めたら貴方そんなんじゃいつまでたっても辛いままよ」
「うるさいっ!恋もしたことも無い小娘に何が分かる!!」
後ろを向いて泣いていのだが振り向いた途端それは鬼女のごとく恐ろしい顔だった。
だが、そんなのに怯む私ではない。
「くだらない」
「うるさいっ!!!黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえぇぇェェェェ!!」
怒る女性の妖の所へなりふり構わずすたすたと向かう。
女性は今にも襲いかかりそうだったのだが。
攻撃される前に靴を脱ぎそれを手に持ち
スパーーン
いい音が体育館に響いた。
叩いたのだ。靴で。
いつの間にか来て見ていた東雲彰がポカーンとするくらい綺麗に。
女性も目を点にしている。
「目、覚めた?はぁ、馬鹿じゃないの
ただ貴方に男を見る目がなかったんでしょう
それをいつまでたっても未練たらったらっと垂れ流してんじゃないわよ
いい加減悲劇のヒロインぶるの止めなさいよ」
女性の顔がみるみると怒りを帯びていく。
「…でも良かったわね気づけて
そのまま立ち去らずに頬にビンタでも一発食らわせてやればよかったのに。」
「え?」
「あなたが悪いわけじゃないし、浮気相手が悪いわけでもない
あなたを傷つけた男が完全に悪いんだから公衆の面前で恥かかせりゃよかったのになんで帰ろうとしちゃったのよ勿体無い
良かったねそんな男と別れられて」
そう言った途端彼女の目には怒りや憎しみが消えていた。
ボロボロと涙があふれる
「本当?」
「ええ本当よ さっきも言ったでしょあなたが悪いわけじゃないって
だからいつまでも悲しむのはやめなさい」
「……うっ!」
彼女が何か言おうとしたのだが、突然頭をおさえ苦しむ。
「ちょっ!大丈夫!?」
その時嫌な感じがした。
多分手遅れただったのだろう。
「あかん 離れんとやばいで」
いつの間にかに隣に来ていた東雲彰が促す。
「っ!」
彼女の気持ちはあまりにも大きく彼女自身を黒く染めた。
憎しみの気持ちが彼女を飲み込み祓わなければいけない程になってしまった。
「ニクイ、ニクイ
あの男が憎い あの女がニクイ
カナしい 寂しイ」
理性を失い狂う。
人だったのに人ではなくなった。
こうなれば祓うしかない。
「すぐに楽にするから待ってて」
彼女だったものが襲いかかってくる。
御札を取り出す。
「幻雷蝶よ ゆけ」
御札が蝶にかわり光の鱗粉をこぼしながら
彼女だったものに向かって飛び攻撃する。
それは雷を帯びた蝶。
「があぁァァァァァァァ」
無数の蝶に囲まれ苦痛の叫びを上げる。
だんだんと声は小さくなり力尽き、消える直前彼女は理性が戻ったのか笑った。
そして、
「ありがとう」
と言った。
そしてそこにはまた華があった。
「大丈夫か?」
東雲彰が酷く心配そうに顔を覗いてくる。
この仕事をしているとどうしてもこういうことは多々ある。
慣れなければいけない。
「ん 大丈夫 ありがとね」
気持だけは貰っておき案内はまた明日と言い今日はもう帰る。
暗い気持ちがいつまでも私の心を支配した。