二度目の初恋
当日

ドタキャン防止の為円を迎えに行くと

案の定、この世の終わりみたいな顔の円が立っていた。

たしかに円の仕事は裏方の仕事で今日の様な目立つ仕事じゃないから

不安な気持ちになるのは仕方がないことだけど・・・


円は俺の顔をみるなり不安な気持ちをぶつけてきた。

しかもすがるような目で大きな舞台は小学校以来だって言うから

円には悪いが笑いそうになる。

「へ~そうなんだ。ちなみに学芸会はどんな役をやったの?」

円の顔を覗き込むように問いかけると円は言いにくそうに口を尖らせ

「・・・・・・カニ」

と小さく呟く。

俺は口に手を当てた。

こいつ可愛すぎる。

だけどダメだ。今それを口に出してしまうと

円を困らせてしまうと思った俺は気持ちをかき消すように

笑った。

「ちょっと!笑わないでくださいよ」

「ごめんごめん。ちょっと想像しちゃった」

顔を真っ赤にさせて怒る顔もかわいい。

「そんな怒るなって。今日はカニなんてもんじゃない。

 とびっきりいい女に変身させてやるよ」といいながら微笑んだ。

そしてデパートにつくとしおりがやってきた。

円と対面しても初めて知ったかのような振る舞いはさすが女優と言ったところだった。
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