二度目の初恋
「頑張ったな」

会場をでると時任さんが私の頭をそっと撫でた。

「あっ、さっきは本当にありがとうございました。
時任さんがいなかったら私どうなっていたか・・・」

私は深々と頭を下げた。

すると時任さんの手には私の分の引き出物の紙袋があった。

「ごめんなさい。荷物まで持っていただいて・・・・・・」

紙袋を受け取ろうと手を差し出した。

だが、時任さんは紙袋を持ったまま首を横に振った。

「どうせ、今家に帰っても泣くだけだろう?円の鳴き声が隣に住んでる
亮太の両親に聞かれたら・・・・・・さっきの小芝居が無駄になる。
それよりも俺と飲みに行こう。俺は円の失恋話を唯一聞いてやれる数少ない
人間の一人だしね」

時任さんは私の返事を待たずに先に歩き出した。

確かに彼の言う通りかもしれない。

亮太の結婚が決まってから誰にも話せなかった。

よく知っている人に話すよりも時任さんなら後腐れないし、

今日が最初で最後になるのだから・・・・・・

「あ!待って~」

私は慌てて時任さんを追いかけた。
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