二度目の初恋
玄関のドアの閉る音と共に全身の力が抜けた。

「あ~・・・どうしよう」

とてもすぐに仕事をする気になれず私はダイニングチェアーに腰掛ける。


そして壁掛のカレンダーに目を向けた。

1ヶ月という契約でこの家で働くようになったがまだその半分にも満たない。

時任さんの言うことは正論だと思う。

だけど亮太の時より酷な感じがしてならない。

だって亮太の事は長年好きだったし家も隣同士だったけど家に入り浸ったりと言うことは

小学生までのことで、それ以降は部屋も隣同士だったから窓越しからの会話がほとんどで

今思うとドライな感じだった。

でも時任さんの場合、知り合ってまだ日は浅いが

家事全般をやって・・・仕事とはいえ洗濯もしていて下着だって洗って干して・・・

それに夕飯は必ず一緒で帰りも必ず送ってくれる。

だから家には寝に帰るだけ・・・

ほんの数日前までは仕事と割り切れていたのに

好きになってしまうと今までも物の見方が

がらりと変わってしまう。



そういえば・・・竹原家政婦紹介所の決まりに客との恋愛を禁ずる
   万が一恋愛が発覚した場合は即解雇

っていうのがあったな~~

でもあたしの場合は片思い。

今の私には片思いも禁止って言ってくれた方が気が楽かもしれない。

どうしよう・・・

片思い相手に私は普通でいられる?

恋愛経験がほぼほぼゼロな私に仕事と恋愛を割り切ることが出来るだろうか

せめて・・・顔を見なければなんとかなるかも?

だって今まで送ってくれたのは亮太と遭遇しないためのボディーガードみたいなものだったよね。

亮太への気持ちがもうなくなった以上送ってもらう必要はないよね。

契約を途中で放棄しないならこれしかないよね。

だが私の考えは甘かった。
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