二度目の初恋
しばらく私達は切り絵に見入っていたが

時任さんはゆっくりと一歩2歩と前へ進むと振り返り私を見た。

「円、もし俺が君を傷つける様なことしてたら謝るよ」

「え?」

さっきまでの穏やかな気持ちが一変し心臓がバクバクし出す。

「だって・・・俺と飯も食いたくないくらい何かがあったからさっきあんなこといったんだろう?」

時任さんの目は寂しそうだった。

「今日、ここへ来たのは円に見せたかったのが第一だけど、お詫びにってのもあって
連れてきたんだ。ただ・・・移動中なんて言えばいいのかわからなくて・・・」

どうしよう・・・そんなつもりで言ったんじゃないのに・・・

私の言った事は完全な我が儘だ。

「ち・・・違うの。傷つけたんじゃなくて・・・傷つくのが怖かったから」

時任さんの悲しそうな顔を見たら本音が出てしまっていた。

「・・・それって・・・どういうこと?」

時任さんが私の前に立ち真剣な目で見つめる。

どうしよう・・・もしかしてこの流れは告白してフラれる流れになるの?


「亮太の事が吹っ切れたって言いましたよね」

「うん」

「どうして吹っ切れたと思います?あんなに何年も何年も片思いして
もう恋なんか出来ないって思っていたのに・・・私は・・・」

「え?ちょ・・・ちょっとまって・・・え?それって」

時任さんは私が最後まで言わないうちに私の腕を掴んでいた。

「好きな人がいるんですよね?」

「誰か好きな人でも出来たのか?」

2人の声が重なったと同時に互いの言った言葉に驚き顔を見合わせた。
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