二度目の初恋
仕事再開の連絡が来たのはそれから一週間後だった。

マンションに着くと理人の靴があった。

嫌な予感がする。実は理人が撮影で地方に行っている間一度も連絡をしていなかったからだ。

わざとではない。話をするには早すぎると思ったから敢えて連絡をしなかったのだ。

でも絶対に何か言われる。

そう思いながら恐る恐るリビングの方へと足を進めるとソファにすわっている理人とばっちり目が合う。

「お、おはようございます」

「おい!なんで連絡よこさなかったんだよ。メモ見なかったのかよ」

人の顔を見るなり挨拶なしのいきなり文句に嫌な予感的中。

「見ましたよ。でもまだ話す時期じゃないって思ったので敢えて連絡しませんでした」

すると不服さ全開のアイドルらしからぬ眉間にしわを寄せた理人が私を睨んだ。

「は?そんなこと言っといて結局なにも出来ませんでしたってことなんだろ?」

人の話を最後まで聞かずしてこのふてぶてしい態度。

こんな性格ならKUMIKOさんも愛想尽かすんじゃないの?と言いたい気持ちを堪えながら

私はバッグをキッチンの入口に置くと手帳を取り出した。

「すみません。5日後の木曜日ですがスケジュールはどのようになってますか?」

淡々と質問する私に理人は胡散臭そうな表情を浮かべる。

「は?仕事だけど」

「それはわかってます。大凡の終了時間が知りたいんです」

理人は面倒くさそうにテーブルの上のスマホを操作した。

「…この日はレコーディングだからうまくいけば早く帰れるかな。で?そんなこと知ってどうしたいの?」

「じゃあ。全力でレコーディング頑張って7時までにはここに戻ってきてくれませんか?」

「は?なに言ってんの?訳がわかんないんだけど」

よっぽど私が連絡しなかったことにムカついてんのだろう。

「KUMIKOさんと会えるようにセッティングしたから聞いてるんです!」

強い口調で答えると理人の表情ががらりと変わりソファから身を乗り出すように私を見る。

「え?!マジで?どういうこと?」
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